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敦煌(とんこう)は、河西回廊の西端に位置する都市です。緑豊かな農地がゴビ砂漠へと変わり、その先にはタクラマカン砂漠が広がります。約1,000年にわたってシルクロードの要衝として栄え、砂漠を越える隊商が休息した場所であり、仏教芸術・交易・多様な文化が幾重にも積み重なってきた地です。
現代の旅行者が敦煌を訪れる目的は主に二つ。世界屈指の仏教芸術の宝庫である莫高窟(ばっこうくつ)と、市街南部に広がる砂漠の絶景——巨大な砂丘を登り、三日月形の泉を見下ろす体験です。このガイドでは、莫高窟のチケット予約方法(当日購入はほぼ不可能です)、敦煌へのアクセス、宿泊先の選び方、そして2〜3日間でのモデルプランをご紹介します。

敦煌の基本情報
敦煌(敦煌、Dūnhuáng)は甘粛省西部の小都市です。市街地はコンパクトで歩きやすく、旅行者が訪れる主な見どころはすべて車で40分圏内にあります。莫高窟は南東方向、鳴沙山と月牙泉は南方向、玉門関・陽関といった砂漠の関所は西に1〜2時間ほどの距離です。主要スポットをゆっくり巡るには2〜3日あれば十分です。
観光のベストシーズンは春(3〜5月)と秋(9〜11月)です。夏は日中気温が35℃を超えることも多く、砂が非常に熱くなりますが、夕方以降の砂丘は人気があります。冬は寒く静かで、一部施設の営業時間が短縮されます。砂漠性気候のため、季節を問わず朝晩と日中の気温差が大きいので、重ね着できる服装の準備をお忘れなく。
敦煌へのアクセス方法
敦煌は辺境の地であることがその魅力の一つでもありますが、アクセスには事前の計画が必要です。現実的な交通手段は主に3つあります。
飛行機でのアクセス
敦煌空港(DNH)は市内から約13km東に位置し、西安・蘭州・北京・上海・成都などへの直行便があります。ただし季節便が多く、冬季は減便されます。西安からは約2時間で到着するため、時間が限られている方には最もおすすめの手段です。フライトのスケジュールと料金の比較にはTrip.comが便利で、中国系航空会社のチケットを外国発行のクレジットカードで購入できます。
鉄道でのアクセス
鉄道でのアクセスには重要な注意点があります。敦煌には2つの駅があり、混同しないよう注意が必要です。
- 敦煌駅(Dunhuang Railway Station):在来線が発着し、蘭州・西安からの寝台列車が利用できます。市内に直結しています。
- 柳園南駅(Liuyuan South Station):蘭新高速鉄道(中国版新幹線)の主要路線が通る駅で、敦煌市内から約130km北、車で約2時間かかります。西安・蘭州・張掖からの高速鉄道はここに停車します。
つまり「高速鉄道(中国版新幹線)で敦煌へ」と調べると、実際には柳園南駅で下車することになり、そこからさらにシャトルバスや送迎車で2時間の移動が必要です。この乗り継ぎ時間を必ずスケジュールに組み込んでください。敦煌駅着の在来線は所要時間は長くなりますが、柳園での乗り継ぎが不要です。
西安からのシルクロードルート
多くの旅行者は、シルクロードの歴史的な東の起点である西安を出発点として、敦煌を最終目的地とするルートで旅しています。定番のルートは「西安 → 蘭州 → 張掖 → 嘉峪関 → 敦煌」で、前半は高速鉄道(中国版新幹線)でつながり、最後に柳園へのアクセスが必要です。このルートをしっかり楽しむには1週間以上かかりますが、中国でも有数の充実した鉄道旅行になります。全行程を計画する方は、シルクロード旅行記:西安から敦煌への記事もあわせてご覧ください。
| 出発地 | 交通手段 | 所要時間(目安) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 西安 | 直行便 | 約2時間 | 最速。季節によって便数が変動 |
| 西安 | 高速鉄道(中国版新幹線)→柳園+送迎 | 約8〜9時間+車で2時間 | 車窓の絶景が楽しめる。乗り換えあり |
| 蘭州 | 飛行機 / 高速鉄道(中国版新幹線)→柳園 | 約1.5時間 / 約6時間+乗り継ぎ | 甘粛省の省都・交通の要衝 |
| 張掖 | 高速鉄道(中国版新幹線)→柳園+送迎 | 約3〜4時間+車で2時間 | 張掖丹霞地貌との組み合わせがおすすめ |
途中で休憩するなら、張掖丹霞の虹色の縞模様の山々は絶好の中継スポットです。また蘭州はこの地域への玄関口として最適です。
莫高窟:必ず事前予約を!
莫高窟(莫高窟、Mògāo Kū)は「千仏洞」とも呼ばれ、敦煌を訪れる最大の目的といえる存在です。4世紀から約1,000年をかけて崖面に掘られた石窟群で、現存する492の窟には壁画と彩色された塑像が収められており、10の王朝にわたる仏教美術とシルクロードの生活を記録した唯一無二の文化遺産です。ユネスコ世界遺産にも登録されており、1,500年前の石窟に入り、保存状態の良い壁画を間近で見上げる体験は、中国の他のどこでも得られないものです。

なぜ事前予約が絶対に必要なのか
繊細な壁画を湿気と人の呼気から守るため、入場者数は厳しく制限されており、チケットは事前予約制です。当日券の購入はほぼ期待できません。夏季やゴールデンウィーク(国慶節など)の最繁忙期には、通常チケットが数日前に完売することも珍しくありません。莫高窟の予約こそが、敦煌旅行で最初に手配すべき最重要事項です。
予約システムの仕組み
チケットは莫高窟の公式予約サイトで販売されており、通常は約1ヶ月前から販売が開始されます。主なチケットの種類は以下の2種類です。
- 通常チケット(Aチケット):デジタル展示センターでの2本の映像上映(シルクロードの歴史を描いたワイドスクリーン映像と、石窟内部を映したドーム映像)と、少人数グループによるガイド付き石窟見学(約8窟)が含まれます。これが標準的な体験で、ぜひ確保したいチケットです。
- 当日チケット(Bチケット):通常チケットが完売した当日に追加販売されるチケットで、映像上映なし・見学窟数も少なめ(通常4窟)です。計画的に取得するものではなく、あくまでも緊急用の代替手段です。
予約は莫高窟(敦煌研究院)公式サイトから行えます。予約にはパスポート番号と中国の決済手段が必要です。中国の電話番号がなく手続きが難しい場合は、Klookなどのプラットフォームでガイド付きツアーを予約すると、チケット手配・送迎・英語ガイドがセットになっており、多くの外国人旅行者に選ばれています。
見学の流れと実用情報
まず市内近郊のデジタル展示センターへ向かい、2本の映像を鑑賞します。その後、シャトルバスで約15km先の石窟本体へ移動します。全体で半日程度を見込んでおきましょう。石窟内は外が暑くても薄暗く涼しくなっています。チケットには中国語ガイドの解説が含まれており、英語ガイドは決まった時間に実施されます。予約時に英語ツアーの時間を確認しておくことをおすすめします。
鳴沙山と月牙泉
市街地から南へわずか6km、そこに突然砂漠が広がります。鳴沙山(めいしゃざん、Míngshā Shān)は「鳴く砂の山」という意味で、砂が流れ落ちる際に低いうなり声のような音を発することからその名がつきました。その砂丘の谷間にひっそりと佇むのが月牙泉(げつがせん、Yuèyá Quán)——三日月形の淡水の池で、周囲を砂に囲まれながら何世紀もの間、同じ場所に存在し続けています。この2つのスポットは同じ有料エリアに含まれており、敦煌を象徴する絶景です。

ここでできる体験:
- ラクダに乗る。隊商のようにラクダの列に乗って砂丘を渡ります。シルクロードの交易路を彷彿とさせる体験で、観光色は強いものの純粋に楽しく、砂丘の頂から砂に囲まれた緑の泉を見下ろす景色は誰もが目指すショットです。
- 砂丘を登る。急な斜面には木製のステップが設置されており、登りやすくなっています。砂よけのシューズカバーのレンタルもあります。砂の斜面を滑り下りる「砂すべり」もこのスポットの醍醐味のひとつです。
- 夕日を見る。午後遅くから夕方にかけてが最も美しい光と快適な気温が重なる時間帯です。夏季には夜間営業の特別延長もあり、砂丘の上で刻々と変わる空の色を眺めるのは、多くの旅行者が旅のハイライトと語るほどです。
ラクダ乗り・パラグライダー・砂漠バギーなどのオプション体験は、GetYourGuideでの事前予約か現地購入のどちらでも対応可能です。繁忙期は事前予約で並ぶ手間が省けます。基本的な砂丘・泉の入場券は、莫高窟のような事前予約は不要です。
玉門関と西部の砂漠
敦煌から北西約90km、広大なゴビ砂漠の中に玉門関(ぎょくもんかん、Yùmén Guān)が立っています。漢代にシルクロードの国境検問所として機能したこの関所は、西域から運ばれてきた玉(ぎょく)にちなんで「玉の門」と名付けられた、文字通り中国帝国の果てでした。現在残っているのは、砂漠にぽつんと立つ風化した版築(はんちく)の砦と、葦と砂利で造られた漢代の万里の長城の一部——中国に現存する最古の長城遺跡のひとつです。
アクセスは長く埃っぽい道のりで、遺跡の規模も石窟に比べれば控えめです。しかし、唐詩の世界で兵士たちが西を見つめたと詠まれた、歴史的な「既知の世界の果て」に立つ感覚は、写真では伝えきれないものがあります。同方向の奥地には雅丹国家地質公園(「悪魔城」とも呼ばれる風食岩地帯)、南西方向には陽関(ようかん)もあります。公共交通機関がほぼないため、ほとんどの旅行者は玉門関・漢代長城・雅丹を1日のチャーター車またはツアーでまとめて巡ります。

宿泊場所について
敦煌の宿泊施設は主に2つのエリアに集中しています。市街中心部(夜市や鳴沙路周辺)は、レストランや交通機関へのアクセスが良く、最も利便性の高い拠点です。砂丘周辺エリアには砂漠の景色を望めるホテルやブティックゲストハウスが増えており、鳴沙山の観光エリアまで徒歩でアクセスできます。
- リーズナブル:市街中心部のホステルやゲストハウス。英語対応スタッフが莫高窟の予約代行や砂漠ツアーの手配をしてくれることも多いです。
- ミドルレンジ:市街地近くの快適なチェーンホテルやブティックホテル。多くの旅行者にとって最もバランスのよい選択肢です。
- ハイエンド:砂丘近くのデザートリゾートやテントキャンプ。砂丘を望む専用テラスや星空観察を楽しめる宿もあります(敦煌は星空が美しいことでも有名です)。
各宿泊施設の立地と料金はBooking.comで比較できます。どの宿泊施設でも、チェックイン時にパスポートを提示すれば宿泊届出(公安届出)(住宿登记、zhùsù dēngjì)は自動的に処理されます。登録が確実に行われているか確認するだけで大丈夫です。詳細についてはホテル予約と宿泊届出のガイドをご参照ください。
敦煌のグルメ
敦煌の食文化は、羊肉・手打ち麺・小麦を中心とした、ボリューム感のある北西部料理です。ぜひ味わいたいメニューをご紹介します。
- 驢肉黄面(ろにくこうめん、lǘròu huángmiàn):敦煌名物のコシのある黄色い小麦麺に、柔らかく煮たロバ肉を乗せた一品。珍しく聞こえますが、食べると絶品です。
- 羊肉串・炭火焼き羊:クミンをたっぷり効かせた炭火焼きで、沙州夜市の屋台が最も美味しいと評判です。
- 杏皮水(きょうひすい、xìngpí shuǐ):地元産アンズから作る甘酸っぱい冷たい飲み物で、暑い日にぴったりの郷土飲料です。
夜は沙州夜市(しゃしゅうよいち)へ。串焼き・麺料理・ドライフルーツ・地元メロンなどが並ぶ屋台が立ち並び、屋外の座席でにぎやかな雰囲気を楽しめます。手頃な値段でいくつもの郷土料理を一度に試せる、夜の定番スポットです。

2〜3日間のモデルプラン
1日目:莫高窟観光
事前予約した莫高窟を午前中に訪問します。まずデジタル展示センターで映像を鑑賞し、シャトルバスで石窟へ。午後は市内の小規模な博物館を巡るか、長旅の疲れを癒すためにゆっくり休んでください。夜は沙州夜市で郷土料理を楽しみましょう。
2日目:砂漠体験デイ
午前中はゆっくり過ごし、午後遅めに鳴沙山と月牙泉へ向かいます。ラクダ乗り・砂丘登り・夕日鑑賞をこの時間帯に行うことで、最も暑い時間を避けながら最高の光景を楽しめます。
3日目(任意):西部の関所巡り
チャーター車またはツアーで玉門関・漢代長城・雅丹地質公園を終日かけて見学します。時間が限られている方や、ゆっくりペースを好む方は省略しても問題ありません——莫高窟と砂丘が敦煌の二大必見スポットです。
日本人旅行者が特に気をつけたいポイント
- パスポートは常に携帯すること。莫高窟では予約情報との照合、ホテルのチェックイン時にも必須です。忘れると入場できません。
- モバイル決済の準備を日本出発前に。夜市の屋台から観光ツアーデスクまで、QRコード決済(アリペイ(支付宝)やWeChat Pay(微信支付))がほぼ必須です。大型施設では現金も使えますが、キャッシュレス化が急速に進んでいます。
- 水分補給と日焼け対策を忘れずに。砂漠は乾燥しており、涼しい日でも紫外線は非常に強くなっています。
- 営業時間・フライト情報は最新情報を確認。観光施設の開館時間やフライトスケジュールは夏冬で変わります。出発前に必ず最新情報をご確認ください。
- インターネット環境について。中国ではグレート・ファイアウォールにより、GoogleやLINE・Instagram等が利用制限されます。VPNの利用については出発前に最新の規制状況を確認のうえ、自己責任でご判断ください。
まとめ:敦煌旅行を成功させるために
敦煌は少しの事前準備が旅の質を大きく左右する場所です。絶対に後回しにできないのが莫高窟の予約です——日程が決まったらすぐに予約サイトを確認し、繁忙期なら数週間前には確保してください。手配が難しければ、予約込みのツアーを利用するのが確実です。
その他の計画として、鳴沙山と月牙泉での砂漠の夕暮れ体験、沙州夜市でのグルメ散策、そして3日目の余裕があれば玉門関でシルクロードが砂漠に消えていく場所に立つ体験をぜひ加えてください。2日あれば主要スポットを押さえられ、3日あればより深くゆったりと敦煌を味わえます。莫高窟の予約を確保し、鉄道アクセスに柳園乗り継ぎがあることを念頭に置けば(要注意ポイントです!)、あとは自然と旅が組み立てられるはずです。
最終更新:2026年6月
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