中国を訪れる旅行者の多くは、デジタル人民元(e-CNY、数字人民币/shùzì rénmínbì)を使わなくても困りません。お手持ちのカードがアリペイ(Alipay)かWeChat Pay(ウィーチャットペイ)に登録できれば、旅行中の支払いはほぼこの2つで済み、e-CNYを足しても便利になる場面はあまりありません。e-CNYを入れておく価値があるのは、次の3つの場合です。カードがどちらのアプリにも登録できないとき、アリペイやWeChat Payではなく公式のe-CNYアプリにカードを登録したいとき、そして外貨の現金を持っていて、中国銀行(Bank of China)の両替機でタッチ決済用のカードに替えたいときです。旅行者は海外の電話番号でウォレットを開設し、VisaかMastercardでチャージできます。使い切れなかったお金は、帰国前にそのカードへ戻せます。

e-CNYは必要?入れるべき人と入れなくていい人
まずは2大決済アプリから考えます。アリペイ(支付宝、Zhīfùbǎo)はUnionPay(銀聯)、Visa、Mastercard、JCB、Diners Club、Discoverのカードに対応していますが、American Expressは使えません。最新の対応ブランドはカード追加画面でご確認ください。WeChat Pay(微信支付、Wēixìn Zhīfù)はこれらすべてに加えてAmerican Expressにも対応しており、こちらもカード追加画面で最新の一覧を確認できます。中国の日常では、屋台、タクシー、コンビニ、チケット売り場のどこでも、この2つのアプリで払うのが前提になっています。配車、シェアサイクル、鉄道のきっぷなど多くのサービスも、この2つのアプリの中で使います。e-CNYは支払い手段であってサービスの入口ではありません。お店やアプリの支払い画面でe-CNYが選べるときに使うものです。
ですから、一般的な旅行なら準備はシンプルです。出発前にアリペイかWeChat Payを設定し(手順は海外カードでアリペイを使う方法と海外カードでWeChat Payを使う方法で説明しています)、e-CNYは入れなくてかまいません。
次のどれかに当てはまる方は、e-CNYを入れておきましょう。
- アリペイでもWeChat Payでもカードが何度も弾かれる。VisaかMastercardであれば、e-CNYへのチャージは通る可能性があります。出発前に日本で一度試しておいてください。公式ガイドがe-CNYのチャージ用に挙げているのはVisaとMastercardだけで、American Express、JCB、Discover、Diners Clubは含まれていません。これらのカードを使うつもりなら、事前にカード追加画面でご確認ください。
- アリペイやWeChat Payにカードを登録したくない。チャージのためにカードの登録は必要ですが、登録先は大手の民間プラットフォームではなく公式のe-CNYアプリになります。旅行者がこのアプリで開設するウォレットは電話番号だけで作れ、銀行口座は不要で、匿名です。
- 外貨の現金を持っていて、人民元の札束を持ち歩きたくない。空港、国境の出入国地点、一部のホテルにある中国銀行の自動両替機は20種類の外貨に対応しており、紙幣をe-CNYの「ハードウォレット」に替えられます。ハードウォレットは、カード端末にタッチして払うカードです。
入れなくていいのは、カードがすでにアリペイかWeChat Payで使えている方、1〜2都市だけの短い旅行の方、管理するアプリをこれ以上増やしたくない方です。カードが登録できないことが問題なら、ほかのプリペイド型の選択肢も検討してください。たとえばUnionPay(銀聯)の「Nihao China」アプリでは、VisaやMastercardから旅行用ウォレットにチャージできます。それぞれの違いは中国で海外カードを使う方法で並べて比べています。
e-CNYとは
e-CNYは中国の公式なデジタル通貨で、中央銀行である中国人民銀行が発行し、紙の人民元と同じ法定通貨です。中央銀行は認可を受けた運営機関(主に銀行)にe-CNYを発行し、運営機関がウォレットを通じて一般の利用者に届けます。この運営機関は2026年8月の時点で30機関ありました。2026年1月1日からは、実名ウォレットに銀行預金と同じように利息が付くようになりましたが、旅行者がアプリで開設する匿名ウォレットには付きません。アリペイやWeChat Payとの違いは次のとおりです。アリペイとWeChat Payは、登録したカードからお金を動かす民間企業のサービスです。一方e-CNYは人民元そのもので、銀行が運営するウォレットに入っています。
設定方法:アプリ、電話番号、ウォレットの種類
設定はすべて1つの公式アプリで行います。アプリ名は英語で「e-CNY」、中国語で「数字人民币」です。App Store、Google Play、Huaweiのアプリストアでどちらかの名前を検索すると見つかります。公式アプリはウェブサイトからのダウンロードリンクでは配布されていないので、そうしたリンクからは入れないでください。App Store版には英語の画面があります。いつものアプリストアが普通に使える日本にいるうちに、出発前にインストールしておきましょう。
- アプリをダウンロードします。画面が中国語で表示された場合は、アプリの設定で言語の切り替えを探すか、スマートフォンのカメラ翻訳を使いながら進めてください。
- 日本の電話番号で登録します。旅行者は海外の携帯番号で登録でき、中国の銀行口座は必要ありません。中国人民銀行が2024年に出した旅行者向けガイドでは、210を超える国と地域の番号が使えるとされていました。アプリがSMSで認証コードを送ってくることがあるので、設定中は日本の番号でSMSを受け取れる状態にしておいてください。
- アプリに表示される運営機関から1つ選んでウォレットを開設します。すべての運営機関が海外の電話番号に対応しているとは限らないので、アプリに実際に表示された一覧から選んでください。
- VisaかMastercardを登録してチャージします(詳しくは次の章で説明します)。
- パスワードを設定し、「Quick Pay」を使うか決めます。ログイン用と支払い用のパスワードは自分で決められます。また「Quick Pay」(少額の支払いをパスワードなしで済ませる機能)のオン・オフと上限額も自分で設定できます。
どの種類のウォレットになるか
e-CNYのウォレットは、本人確認の度合いによって4つの種類(1類〜4類)に分かれています。1類から3類は身分証明書が必要で、さらに1類と2類は本人名義の中国の銀行口座も必要です。4類は電話番号の確認だけで作れ、銀行口座とはつながっておらず、匿名です。アプリで開設するウォレットは4類で、実名ウォレットは銀行の支店などを通じて開設する必要があります。旅行者はこの4類ウォレットで問題ありません。ある銀行の規定では、1つの電話番号で開設できるウォレットは運営機関ごとに1つだけです。これが関係するのは、同じ番号でもう一度ウォレットを開設しようとしたときくらいです。
どのウォレットにも、残高、1回の支払い、1日と1年の利用額に上限があり、ウォレットの種類によって決まっています。ご自身の上限額はアプリのウォレット画面に表示されるので、ホテル代などの大きな支払いをe-CNYで済ませるつもりなら、事前にそこで確認してください。目安としては、香港の電話番号で開設した4類ウォレットの上限は1回2,000元、1日5,000元、1年50,000元、残高10,000元です。それ以外の海外番号で開設したウォレットは数字が異なる場合があるので、ご自身の上限はアプリでご確認ください。食事や地下鉄、ちょっとした買い物なら上限が問題になることはまずありません。実際に困りやすいのは、e-CNYを受け付けるお店が少ないことです。
アプリやチャージでトラブルが起きたときは、e-CNYのカスタマーサービス(+86-10-956196、24時間対応)に連絡できます。
💡 ヒント:少額のチャージを1回試すところまで含めて、設定はすべて日本を出る前に済ませておきましょう。どこかの手順でつまずいても、出発前なら直す時間がありますし、アリペイやWeChat Payに切り替えることもできます。
チャージの方法
主な方法は海外カードからのチャージです。アプリでVisaかMastercardを登録し、支払いの前にウォレットへお金を入れておきます。海外カードで「先にチャージしてから使う」方法ができるようになったのは2023年9月からで、それまでは支払いのその場でカードから払うことしかできませんでした。公式ガイドがこの方法で挙げているのはVisaとMastercardだけです。ほかのカードをお持ちの場合は、カード追加画面で選べるかどうかを確認してください。
カードからのチャージの手数料や為替レートは公表されていません。日本円からの換算はカード会社が行い、通常の海外事務手数料が加わる場合があります。確定する前に、カードの規約とチャージ画面に表示される金額を確認してください。使わなかったお金はあとでカードに戻す手間がかかるので、数日のうちに使い切れそうな金額を少しずつチャージするのがおすすめです。
もう1つの方法は外貨の現金です。中国銀行の自動両替機に外貨の紙幣を入れると、人民元の現金かe-CNYのハードウォレットのどちらかを受け取れます。ハードウォレットへの追加チャージも同じ機械でできます。ハードウォレットに対応していない機械もあるかもしれないので、画面にその選択肢が出てこないときは、近くの銀行窓口で聞いてみてください。現金の両替全般については中国での両替場所をご覧ください。

どこで使えるか
アプリでは、e-CNYを受け付けるお店でQRコードを読み取るか、自分のQRコードを見せて支払います。公式には交通、飲食・娯楽、買い物、公共料金の支払いに使えるとされていますが、実際には、e-CNYを受け付ける小さなお店は、アリペイやWeChat Payを受け付けるお店よりずっと少ないです。お店ではレジにあるe-CNYの受付マークを探してください。オンラインでは、公式の旅行者向け案内がDiDi、Meituan(美団)、Trip.com、Qunar(去哪儿)、JD.com(京東)などを対応プラットフォームとして挙げています。支払い画面にe-CNYの選択肢があるかご確認ください。使えるのはお店への支払いだけで、ほかの人のウォレットにe-CNYを送ることはできません。注文する前にお店に使えるか聞き、アリペイ、WeChat Pay、または少しの現金を予備として持っておきましょう。
アプリの登録と利用ができるのは公式の試行地域で、北京、天津、河北、上海、重慶、西安、長沙、大連、広東省、江蘇省、四川省、海南省、そして浙江省(杭州など)、福建省、山東省、広西、雲南省のうち指定された都市が含まれます。広西で挙げられているのは南寧と防城港だけなので、桂林と陽朔は含まれていません。初めての中国旅行で訪れる場所は、ほとんどがこの一覧に入っています。ただし一覧に入っているのは「アプリが使える」という意味で、「ほとんどのお店で使える」という意味ではありません。また、これらの地域の外で使えるかどうかを中国人民銀行は示していないので、ほかの場所で使うつもりなら事前にアプリで確認してください。
ハードウォレットは使い方が違います。e-CNYに対応したカード端末にタッチして払います。タッチ決済の銀行カードと同じ使い方です。
地下鉄と交通機関
いちばんはっきりしているのは上海です。2025年6月28日から、上海地下鉄の全路線の改札で、中国人民銀行の基準を満たすe-CNYのハードウォレットが、タッチ決済の銀行カードと並んで使えるようになりました。蘇州の地下鉄の改札では、UnionPay(銀聯)のタッチ決済カードかe-CNYのハードウォレットでタッチして入れますが、海外発行のVisaやMastercardは改札でタッチできません。杭州では、地下鉄の乗車規則で、杭州地下鉄の乗車用QRコードを出せるアプリの1つとしてe-CNYアプリが挙げられています。ほかの都市については、e-CNYが使える地下鉄の公式な一覧はないので、駅で確認してください。多くの都市では、タッチ決済のカードか、アリペイ・WeChat Payの乗車コードを使うほうが簡単です(中国の地下鉄ガイドをご覧ください)。
北京では、中国聯通(China Unicom)が2025年に旅行者向けのSIMカード「CUBe」を導入しました。北京首都空港と北京大興空港にある同社のカウンターで、パスポートとビザを提示して受け取れます。モバイルデータ、通話、e-CNYでの支払い、交通カード「BEIJING PASS」の機能が1枚にまとまっていて、アプリのインストールや登録は必要ありません。物理SIMなのでスマートフォンにSIMスロットの空きが必要です。現在も販売しているかは、空港の聯通カウンターでご確認ください。

帰国前に:残ったお金の扱い
アプリのウォレットに残ったお金がなくなることはありません。残高は、チャージに使った海外の銀行カードや口座に戻せます。返金にかかる日数や手数料の有無について公式な説明はないので、帰国便の数日前には手続きを済ませ、あとでカードの利用明細を確認してください。
ウォレット自体も削除したい場合は、先に残高をゼロにし、ウォレットが凍結されていない通常の状態である必要があります。削除は取り消せず、そのウォレットは二度と支払いに使えなくなります。削除しなくても問題はありません。もう一度中国に来る可能性があるなら、お金だけカードに戻して、空のウォレットを残しておけば大丈夫です。
ハードウォレットはカードとつながっていないので、旅行の最後の数日で使い切るか、中国銀行の窓口で残高をどうできるか聞いてください。余った人民元の紙幣は、市内や出国前の両替窓口で外貨に戻せます。出発日のその他の流れは中国出国ガイドにまとめています。
よくある質問
中国の電話番号がなくてもe-CNYのウォレットは開設できますか?
はい、できます。旅行者は海外の携帯番号でe-CNYアプリに登録し、VisaかMastercardでチャージできます。開設されるのは匿名の4類ウォレットで、必要なのは電話番号だけ、中国の銀行口座はいりません。アプリがSMSで認証コードを送ってくることがあるので、設定中はその番号を使える状態にしておいてください。
e-CNYで地下鉄に乗れますか?
上海なら乗れます。e-CNYのハードウォレットは、地下鉄の全路線の改札で使えます。蘇州でも改札でe-CNYのハードウォレットをタッチして入れます。杭州では、e-CNYアプリで地下鉄の乗車用QRコードを出せます。ほかの都市では、使う前に駅で確認してください。ほとんどの旅行者にとっては、タッチ決済の銀行カードか、アリペイ・WeChat Payの乗車コードのほうが簡単です。
ウォレットに残ったお金は無駄になりますか?
いいえ。残高はチャージに使った海外カードに戻せます。ウォレットを削除するには残高がゼロである必要があるので、削除する前にこの手続きをしてください。返金にかかる日数や手数料は公表されていないので、帰国便の数日前には始めておきましょう。
まとめ
ほとんどの旅行者は、カードを登録したアリペイかWeChat Payがあれば十分で、e-CNYは入れなくてもかまいません。e-CNYを入れるのは、カードがどちらにも登録できないとき、電話番号だけで作れる決済ウォレットを使いたいとき、外貨の現金を中国銀行の両替機でタッチ決済用のカードに替えたいときです。入れる場合は、日本で設定して少額のチャージを試し、ウォレット画面で上限額を確認し、予備の支払い手段も持っておき、帰国の数日前に残高をカードへ戻してください。e-CNYとカード、現金、2大決済アプリの関係については中国の決済システムのしくみをご覧ください。公式の情報源としては、中国人民銀行の訪中者向け支払いガイドと、香港金融管理局のe-CNYのページがあります。
最終更新日:2026年10月
ファクトチェック済みの出典
- 公式 Bank of China 3 ページ
- 公式 People's Bank of China 3 ページ
- 公式 Beijing Municipal Government 4 ページ
- 公式 english.www.gov.cn 2 ページ
- 公式 unionpayintl.com
- 公式 Shanghai Municipal Government 3 ページ
- 公式 China Construction Bank (Asia) 2 ページ
- 公式 Hong Kong Monetary Authority
他 8 件の出典を表示
- Xinhua News
- 公式 itunes.apple.com
- 公式 m.bankcomm.com
- 公式 en.by.gov.cn
- 公式 Suzhou Municipal Government
- Tencent News
- 公式 Suzhou Rail Transit 2 ページ
- 公式 hzmetro.com
最終確認日: 2026-11-02
関連記事
中国で海外クレジットカードを使うには:Visa・Mastercard・Amex・JCBとATM
VisaやMastercardは、中国では主にAlipayとWeChat Payを通して使います。カードを直接タッチできる場所、ATMでの現金引き出しの上限、かかる手数料、持っていくカードの選び方をまとめました。
中国旅行に現金は必要? 持っていく金額と入手方法
中国には現金を少し持っていきましょう。ただし、アリペイやWeChat Payの予備としてです。持っていく金額の目安、税関の制限額、いちばん安い人民元の入手方法、余ったときの対処を説明します。
中国の支払い方法ガイド:スマホ決済・カード・現金・デジタル人民元
中国での支払いの仕組みをまとめました。海外のカードを登録したアリペイとWeChat Payの使い方、カードや現金が使える場所、カードのタッチで地下鉄に乗れる都市、旅行のタイプ別に用意すべき組み合わせを説明します。
海外発行カードでアリペイ(Alipay)を使う方法:登録手順・手数料・つまずいた時の対処
アリペイに追加できる海外発行カードの種類、登録からカード追加までの手順、200元を境にした手数料のルールと上限額、カードを追加できない時の対処法をまとめました。