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中国は、入国の条件として海外旅行保険を義務づけてはいません。ビザ免除で入国する場合に係官が携行を勧めている書類は航空券や宿の予約、招へい状といったもので、保険はその中に入っておらず、観光ビザの申請書類リストでも通常は求められませんが、申請先の領事館の最新のリストはご確認ください。ただ、中国の公立病院は外国人にも中国人と同じ料金を適用しますし、保険会社がその病院とキャッシュレス診療(保険会社が病院へ直接支払う仕組み)の契約を結んでいないかぎり、支払いはその都度その場で自分で立て替えることになります。そして、いちばん高くつくのは病院の窓口ではなく、重い症状のときに医療搬送で帰国する費用です。米国大使館は、アメリカへの医療搬送に5万米ドルを大きく超える費用がかかるとしています。つまり、義務ではないけれど、先払いの仕組みと搬送費用のリスクを考えると入っておく価値がある、ということです。この記事では、保険なしだといくらかかるのか、中国で本当に効いてくる補償はどれか、保険金の請求はどう進むのか、そしてどう買うのかを順に説明します。
入るべきかどうか――2分で決める
| あなたの状況 | 入るべき? | 理由 |
|---|---|---|
| 加入中の健康保険やクレジットカードの補償が、医療搬送も含めて海外で使える | 約款を確認したうえで、不要な場合もあります | 中国が対象地域に入っているか、医療搬送が対象か、病院へ直接支払われるか(または払い戻しが早いか)をご確認ください |
| 海外での治療は補償されるが、医療搬送は対象外 | 必要です。医療+搬送のプランを | 搬送はいちばん高額で、自費では払いきれない部分です |
| 海外での補償がまったくない | 必要です。総合型のプランを | 払い戻しを受けるまで、病院の支払いはすべて自分で立て替えます |
| 登山やハイキング、スキー、サイクリング、バイクのレンタルをする | 必要です。その活動が約款に明記されたプランを | 一般的なプランでは対象外のことが多く、山で転んだ後に気づくのでは遅すぎます |
| 長期の旅行、高額な航空券、払い戻し不可の予約が多い | 必要です。キャンセルと中断の補償つきで | パスポートの紛失や病気で、1週間分の予約が無駄になることがあります |
1行目に当てはまる方は、確認をていねいにしてください。海外での「緊急の治療」は対象でも、帰国のための搬送は対象外という保険は珍しくありません。クレジットカードに付いている旅行保険も同じで、そのカードで旅費を払った場合だけ有効というものが多く、医療費の上限も低めです。医療搬送やキャッシュレス診療まで含まれているとはかぎりませんので、条件は約款でご確認ください。中国で確認すべきことは2つだけです――中国の病院へ保険会社が直接支払ってくれるか、そして医療搬送は含まれているか。どちらか一方でも「いいえ」なら、保険に入ってください。

保険に入らないと、いくらかかるか
まずは安心できる部分から。公立病院の料金は市が定めていて、低く抑えられています。北京の最上位クラスの公立病院では、一般外来の診察にあたる費用が1回50元(人民元)、救急が70元、入院が1床1日あたり100元で、検査や薬代はこれとは別です。上海では、2026年4月から施行されている現行の料金表で、最上位クラスの公立病院の一般外来の診察料は25元、救急の診察料は30元が上限とされています。北京の救急車は最初の3キロまでが50元、それ以降は1キロごとに7元、これに救急処置の費用が1回40元です――120番への通話そのものは無料ですが、搬送は有料です。おなかを壊した、手首をひねったといった程度の受診なら、診察の費用は上に挙げた数十元の範囲です。検査と薬は別途かかりますが、それでも大きな額にはなりません。
次が、保険に入る理由になる部分です。英語が通じて待ち時間も短い民間の国際病院は、欧米の自由診療と同じような価格帯です。上海東方国際医療センター(SEIMC)の公示価格表では、診察料が1回1,000〜1,500元、救急が1回1,500〜2,200元とされていて、検査や治療の費用はここに上乗せされます。どの病院でも、入院となればまず保証金(デポジット)を求められるのが普通で、米国大使館も入院前の保証金を一般的な慣行だと説明しています。重い病気やけがなら、帰国する前に何日分もの費用を窓口で払うことになります。そのうえに、先ほどの医療搬送の金額が乗ります。クレジットカードの利用枠で払える額ではありません。保険に入るかどうかは、この2つで決まります。日常的な医療は自分で払えるくらい安く、めったに起きない大事故や大病はそうではない、ということです。
中国で効いてくる補償項目
- 医療費の補償は、上限を高めに。上限額は、医師の診察1回分ではなく、民間の国際病院に1週間入院して手術を受けた場合を想定した額にしてください。欧米の病院の請求額に対して足りないと感じる上限額なら、中国でも足りません。
- 医療搬送と本国への搬送。上に書いた理由から、ここは外せません。搬送するかどうかを保険会社が主治医と相談して決め、費用を搬送を担う会社へ直接支払う形になっているかをご確認ください。この金額を立て替えるのは無理です。
- 中国でのキャッシュレス診療と、その対象病院。キャッシュレス診療は、保険会社とその病院のあいだに契約がある場合にだけ使えます。契約があれば、保険会社のカードとパスポートを提示することで病院が保険会社に請求してくれ、契約がなければ自分で払って後から請求することになります。大手にはこうしたネットワークがあります。上海和睦家医院(Shanghai United Family Hospital)は、40社を超える海外の保険会社とのキャッシュレス対応をうたっています。北京のクリニック「International Medical Center」は50社以上と提携しています。成都の四川大学華西医院は20社以上の提携先があり、外貨での精算にも対応しています。契約する前に、保険会社へ中国国内の提携病院ネットワークを問い合わせてください。中国で英語が通じる病院の一覧では、どの病院がキャッシュレス対応をうたっているかがわかります。
- 中国からつながる24時間のアシスタンスデスク。保険会社のアプリやサイトは、中国の回線では開かないことがあります。電話番号とメールアドレスの両方を控えて、手元に残しておいてください。
- 旅券(パスポート)まわりの費用。パスポートをなくすと、大使館の手数料と延泊の費用がかかり、場合によっては航空券を取り直すことになります。どこまで支払われるのか、どんな証明を求められるのかをご確認ください。パスポートをなくしたときの手続きを読めば、手順の多さがわかります。
- 旅行のキャンセルと中断。払い戻しの利かない支出――航空券、ツアー、高速鉄道、ホテル――に見合う額にしてください。中国できっかけになるのは、たいていパスポートの紛失か入院で、どちらも1週間分の予約が飛ぶことがあります。
- アクティビティ。一定の標高を超える登山、スキー、サイクリング、スクーターの運転は、対象外だったり補償が制限されたりすることがよくあります。旅程に入っているなら、それらが名指しで書かれたプランを選んでください。
- 既往症。必ず申告してください。申告していない持病は、高額な保険金が支払われなくなる代表的な理由です。
- 手荷物と電子機器。あると助かりますが、優先度は下がります。1点あたりの上限額を、自分のスマートフォンやカメラの値段と比べてみてください。

もしものときに――中国からの保険金請求
保険会社は書類で判断します。ですから旅行中にやっておくことは、必要な書類をそろえておくことです。盗難や紛失なら、警察に届け出て、書面の受理証である受案回执(shòu'àn huízhí)を受け取ってください。警察は届け出た人にこれを交付することが定められています。これが中国の警察署から出る書類で、保険会社の言う「police report」にあたります。治療を受けたら、正式な領収書である发票(fāpiào)をすべて保管し、診断書と治療内容の明細を印刷してもらってください。北京協和医院(PUMCH)の国際医療部のような窓口は英語で対応していて、独自のキャッシュレス診療の手続きもあります――英語の診断書は、その場で頼んでください。国際医療部以外では、領収書もカルテも中国語です。そのままで受け付けてもらえるのか、翻訳が必要なのかをアシスタンスデスクに確認し、帰国する前に片づけておいてください。アシスタンスデスクへの連絡はできるだけ早く、急ぎでない治療なら受診の前にしてください。その段階なら、キャッシュレス診療や支払保証(保険会社が病院に対して支払いを約束するもの)を手配してもらえますし、早めに連絡して手続きを始めたほうが、支払いも早く進みます。受け取った書類はその日のうちに写真に撮り、日付、担当者の名前、金額をメモしておいてください。一つ区別しておきたいことがあります。店とのトラブル――偽物をつかまされた、申し込んだツアーが実施されなかった――は保険の話ではありません。それは消費者向けの相談ホットライン「12315」の担当です。警察署での届け出そのものについては、緊急連絡先のガイドで説明しています。
どう買うか
保険は、自国を出る前に買ってください。出発後に加入した保険は、すでに起きたことを対象外にするのが普通で、加入から数日間を補償の対象外とするものもあります。今年の大きな旅行がこれ一回なら1回ごとの契約、年に何度も出かけるなら年間契約を選んでください。後者のほうがたいてい割安ですし、毎回買い直す手間も省けます。比べるときは値段ではなく、ここまでに挙げた項目で比べてください。医療搬送の上限が低かったり、中国の病院への支払い方法――キャッシュレスなのか立て替えなのか、払い戻しはどのくらい早いのか――がはっきりしなかったりする安いプランは、結局のところ安くありません。長期の旅行や日程を決めきっていない旅行なら、SafetyWing は月ごとに更新していく形で、海外にいながら延長するのが簡単です。World Nomads はアクティブな旅行の補償を軸にしていて、対象にする活動を追加できます。Allianz Travel Insurance は、日程の決まった旅行向けにキャンセル補償のついた1回ごとのプランを出しています。どれを選ぶにしても、契約する前に中国の病院への支払い方法を確認し、医療・搬送・キャッシュレス診療の各条項は最後まで読み、アシスタンスデスクの電話番号はインターネットがなくても見られるところに控えておいてください。買うのは中国国内ではなく、自国からにしてください。中国の販売者から買った保険は中国のルールが適用され、もめたときの手続きも中国国内で、中国語で進みます。
中国ならではの注意点
アシスタンスデスクの電話番号とメールアドレスは、メモアプリなどに文字で控えておいてください。保険会社のアプリが中国で動く前提にしないほうが安全です。病院では、受付が保険証券を見てからキャッシュレスにするかどうかを判断しますので、保険会社のカードの現物か、証券番号の載った画面のスクリーンショットを持っていってください。公立の救急車は市が定めた料金で請求されますが、民間病院が自前で出す救急車はその病院の料金です。民間病院に救急車を出してもらう場合は、費用を確認してください。それから、現金と、使えるカードは用意しておいてください。北京市の外国人患者向け公式ガイドは、対象としている病院で「Visa」「Mastercard」「American Express」「UnionPay」(銀聯、中国独自のカードブランド)「WeChat Pay」「Alipay」が使えると案内していますが、米国大使館は、それでも支払いで困る例が少なくないとしています。後から払い戻される保険でも、その場では自分で払う必要があります。
よくある質問
中国旅行に海外旅行保険は必須ですか?
いいえ。ビザ免除での入国では求められません。係官が携行を勧めている書類は航空券や宿の予約、招へい状といったもので、観光ビザの申請書類リストでも通常は求められませんが、申請先の領事館の最新のリストはご確認ください。入るかどうかはお金の判断です。ただ、先払いの病院の仕組みと医療搬送の費用を考えると、多くの旅行者にとっては迷うところの少ない判断になります。
中国の病院では、治療の前にお金を払わされますか?
急ぎでないものについては、そうです。公立病院なら中国人と同じ料金で、検査や処置のたびに窓口で先に払い、保険会社が病院へ直接支払う形になっていないかぎり、あとから請求して払い戻してもらうことになります。入院するなら、保証金を求められると考えておいてください。本当の緊急時は治療が先で支払いは後というのが普通ですが、命に関わる状況でないかぎり、そこを当てにしないほうが安全です。
中国向けの海外旅行保険は、だいたいいくらですか?
年齢、旅行の日数、住んでいる国、選んだ医療費と医療搬送の上限額、追加したアクティビティ、既往症を申告するかどうかで変わるので、見積もりの幅は大きくなります。同じ旅程で2〜3社の見積もりを取り、保険料だけでなく、医療搬送の上限額とキャッシュレス診療のネットワークを比べてください。ほかより極端に安いプランは、たいてい何かが抜けています。中国の場合、抜けているのは医療搬送か医療費の上限であることが多いです。
中国で盗難に遭いました。保険会社にはどんな書類が必要ですか?
届け出た警察署で受け取る受案回执(事件受理の受領証)と、盗まれたものの領収書や写真です。パスポートの場合は、出入境管理の窓口が出す「Passport Loss Certificate」(旅券紛失証明)と、大使館での再発給の書類も加わります。届け出は、その日のうちに済ませてください。届け出の遅れは、盗難の請求が疑われる代表的な理由です。
旅程が30日以内のビザ免除の枠に収まるなら、ほかに何を用意しておくべきかは中国のビザ免除入国のガイドにまとめています。請求先となる中国の医療の仕組みそのものについては、中国の医療と病院から読んでみてください。
最終更新: 2026年9月
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