安全と健康

中国での医療・健康管理ガイド

中国旅行中の医療事情を徹底解説。緊急連絡先(救急番号120)、公立病院の受診手順、英語対応病院、薬局の使い方、海外旅行保険、そして健康を守るための実践的なアドバイスをお届けします。

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中国旅行中に医療機関を利用する必要が生じることは、それほど多くありません。多くの旅行者にとって、風邪薬や胃腸薬を薬局で購入する程度で済みます。しかし万が一、病気やけがをした場合、日本とは異なる医療システムに戸惑うことがあります。中国の公立病院は検査・処方のたびに都度精算する仕組みで、救急車も現金前払いを求められることがあります。また、多くの海外旅行保険は現地での直接支払いに対応していません。

とはいえ、仕組みを事前に把握しておけばまったく難しくはありません。このガイドでは、緊急連絡先、病院の受診手順、英語対応医療機関、薬局の利用方法、そして旅行前に準備しておくべき健康管理のポイントをわかりやすく解説します。

※ 日本人旅行者へのポイント:日本の健康保険証は中国では使用できません。海外旅行保険への加入と、アリペイ(支付宝)またはWeChat Pay(微信支付)などのモバイル決済の準備が不可欠です。
Bright outpatient lobby of a modern Chinese hospital with self-service check-in machines and signage

中国の緊急連絡先番号

中国では、日本の「110・119」のような統一緊急番号はなく、サービスの種類ごとに番号が分かれています。すべてSIMカード未挿入の携帯電話や、ロック中の端末からでも無料でかけられます。

番号用途
120救急・医療緊急事態
110警察
119消防・火災
122交通事故
12395海上遭難・救助

医療緊急事態では120を覚えておいてください。国家衛生健康委員会(NHC)が公認する、24時間365日無料の救急コールセンターです。

ただし、正直にお伝えすると、オペレーターは基本的に中国語対応です。英語対応のオペレーターが必ずいるとは限りません。中国語を話せない場合は、以下の方法を活用してください。

  • ホテルのフロントに電話をかけてもらう(最も確実)
  • 近くにいる中国語を話せる人に助けを求める
  • 翻訳アプリ(Google翻訳など)を使って症状や場所を伝える
💡 北京にお住まいの方・北京旅行者へ:北京では120(北京救急医療センター)と999(北京赤十字緊急救助センター)の2系統の救急サービスが運営されています。どちらもご利用いただけます。北京以外の都市では120のみご利用ください。

120に電話する際に伝えること

オペレーターには以下の3点を簡潔に伝えてください。

  1. 救急車が必要であることを伝える
  2. 主な症状を簡潔に説明する(例:胸の痛み、意識不明、大量出血など)
  3. 現在地をできるだけ具体的に伝える(建物名、通り名、近くの目印など)

通話は短く要領よく。わかりやすい住所がない場合は、近くのコンビニ名や地下鉄の出口番号を伝えると位置を特定しやすくなります。電話はオペレーターが切るまで切らないようにしましょう。

⚠️ 注意:米国国務省の情報によると、中国の救急車は搬送前に現金での支払いを求めることがあります。現金またはモバイル決済アプリを必ず手元に用意しておいてください。また、都市部の中心地では救急車の到着は比較的早いですが、郊外や地方では時間がかかることがあります。日本の救急サービスと同じスピードや設備を期待しないようにしましょう。

救急車の料金目安

料金は都市によって異なり、全国統一料金はありません。参考として、北京の統一料金(120・999共通)は以下の通りです。

  • 最初の3kmまで:50人民元(RMB)
  • 3km超過後:1kmあたり7人民元(RMB)
  • これに加え、重篤患者搬送料および現場での処置・薬剤・輸血費用が別途請求されます

※他都市では独自の料金体系が設定されているため、あくまでも参考値としてください。

中国の病院の仕組みを理解する

受診前に知っておくべきポイントが2つあります。

病院のランク制度(等級制度)

中国の病院は「三級三等」制度でランク付けされています。最上位の三级甲等(3Aランク)は、最高水準の設備・専門医・検査体制を備えた大規模総合病院です。何か重大な症状がある場合は、3Aランクの病院を選ぶことをおすすめします。3Aランクの病院では検査結果24時間以内の提供が義務付けられ、料金も掲示されています。

一般外来と国際部の違い

中国の病院には大きく2種類の受診方法があります。

区分一般外来(普通门诊)国際部・外資系病院
費用安い高い
待ち時間長い(混雑あり)比較的短い(予約制)
言語中国語のみがほとんど英語対応(日本語対応あり)
適した状況軽症・節約重視言語の不安がある・緊急性高い
Infographic showing the six-step process of seeing a doctor at a Chinese public hospital

公立病院の受診手順(ステップバイステップ)

中国の公立病院では「挂号(グアハオ)」と呼ばれる受付・予約システムを採用しており、各ステップで都度支払いが発生します。日本のように後日まとめて請求書が届く仕組みではありません。初めて受診する方が戸惑いやすいポイントですので、流れを丁寧に説明します。

  1. 受付・挂号(グアハオ)
    パスポートを持って受付窓口へ。初診の場合は診察記録カード(病历卡・ビンリーカー)が発行されます。小額の受付料を支払い、受診する診療科を選択します。
    ※ 受診したい診療科名をあらかじめ中国語でメモしておくと手続きがスムーズです。
  2. 診察待ち・順番待ち登録
    受付後、自動受付機またはトリアージ窓口で受診順を登録する必要があります。この手順を省略すると順番が無効になることがあります。モニターで番号や名前を確認しますが、ローマ字表示されないことも多いため、看護師が声をかけてくれる場合もあります。
  3. 医師の診察
    番号が呼ばれたら診察室へ。診察時間は短く、要点を絞って話すことが求められます。
  4. 検査前の支払い(重要)
    医師が血液検査・レントゲン・CTなどを指示した場合、検査を受ける前に会計窓口(またはアリペイ(支付宝)・WeChat Pay(微信支付))で支払いを済ませる必要があります。支払い後、指定の検査室へ向かいます。
  5. 処方薬の受け取り前の支払い
    処方箋が出たら、まず会計窓口で薬代を支払い、その後院内薬局(药房・ヤオファン)で薬を受け取ります。
  6. 入院・手術の場合
    入院や手術が必要な場合は、通常、事前に保証金(デポジット)の支払いが求められます。
💡 重要:領収書(発票)は必ず保管してください。
各支払いの領収書と正式な発票(ファーピャオ)は、帰国後に海外旅行保険に保険請求する際に必要となります。正式な発票がないと、多くの保険会社は保険金を支払わない場合があります。領収書は1枚も捨てずに保管してください。

事前にオンライン予約する方法

多くの病院では、WeChatのミニプログラムを通じて外国人も予約が可能です。ただし、初回利用時はパスポートによる本人確認が必要で、外国人書類は手動審査が必要なため、受診予定の1〜3日前にパスポートに記載された正式な氏名で登録を完了させておくことをおすすめします。病院のカスタマーサービスに連絡すると審査が早まる場合があります。

上海では、海外からの訪問者が健康云(ジエンカンユン)アプリまたはWeChatミニプログラム「健康云Pro」を使って公立医療機関の予約が可能です。パスポートで本人確認登録後にご利用いただけます。詳細な手順は上海市公式ガイドをご参照ください。

英語対応病院・国際部の探し方

中国語での受診に不安がある方には、以下の2つの選択肢があります。

大型公立病院の国際部(国际部)

多くの3Aランク病院には、英語対応スタッフ・バイリンガル医師を備えた国際部が設置されています。一般外来よりも費用はかかりますが、言語の壁を解消でき、待ち時間も短く、予約制で受診できます。

外資系・私立国際病院・クリニック

最も有名なのは北京和睦家医院(Beijing United Family Hospital)です。1997年に中国初の外資系病院として開設され、国際JCI認定を取得した中国初の病院でもあります。現在はUFH(United Family Healthcare)ネットワークとして、北京・上海・広州・深圳・天津・青島などに拡大しており、多国籍の医師陣と英語対応の看護チームが揃っています。日本の私立病院に近い感覚で受診できますが、費用もそれなりにかかります。

外国人患者向けの料金目安

(第三者機関による推定値です。受診前に必ず最新の料金をご確認ください)

サービス内容公立病院一般外来国際部外資系私立病院
医師診察料約¥300〜2,200円相当約¥6,000〜15,000円相当約¥18,000〜37,000円相当
MRI・CT(1部位)約¥9,000〜18,000円相当約¥22,000〜45,000円相当約¥75,000〜135,000円相当

※ 上記は米ドル建て参考価格を円換算した目安です。実際の料金は病院・時期により異なります。

滞在都市での英語対応医療機関の探し方については、英語対応病院の探し方ガイドもご参照ください。また、各国大使館も医療機関リストを提供しています。在中国日本国大使館にもお問い合わせいただけます。

⚠️ 注意:米国大使館の推奨事項として、注射針などの医療器具については滅菌済みのものを使用するよう求めることが挙げられています。信頼できる3Aランク病院や国際病院では通常問題ありませんが、念のため確認することは合理的な対応です。

医療搬送・緊急支援サービス

重篤な状態や医療搬送(エバキュエーション)が必要になる可能性がある場合、国際的な緊急支援サービスを事前に把握しておくことをおすすめします。

  • インターナショナルSOS:北京に24時間対応の支援センターを運営(電話:+86-10-6462 9100)
  • 国際緊急救援センター(IERC):全国数百の病院と提携するネットワーク、24時間対応(電話:800-810-9995 または 010-88393900)。利用にはメンバー登録が必要です。

これらのサービスは多くの場合、海外旅行保険のプランに含まれています。ご自身の保険内容をあらかじめご確認ください。

海外旅行保険:必ず加入してください

率直にお伝えします。日本の健康保険は中国では使えません。公立病院は原則として治療前に支払いを求めます。多くの海外旅行保険は立替払い(キャッシュレス非対応)で、帰国後に正式な領収書・発票・診断書を揃えて請求する形式です。

Cigna・Bupa・Allianzなどの上位の国際医療保険であれば、一部の外資系私立病院でキャッシュレス(直接請求)対応が可能な場合がありますが、受診前に必ず保険会社に連絡して提携病院かどうかを確認してください。

救急車に現金が必要になることや、入院費が数十万円規模に及ぶこともあることを考えると、緊急医療搬送を含む十分な補償額の海外旅行保険は、中国旅行前に準備すべき最重要事項のひとつです。旅行者向け保険としてはSafetyWingなどのプロバイダーが参考になります。入院・搬送の補償内容を複数のプランで比較検討してください。保険選びの詳細については、中国旅行向け海外旅行保険ガイドをご覧ください。

💡 保険請求に必要な書類チェックリスト:
  • 正式な発票(ファーピャオ:中国の正式領収書)
  • 診断書・医師の診察記録
  • 処方箋のコピー
  • 支払いの明細書すべて
書類が不足すると保険金が支払われない場合があります。

薬局の利用方法

軽い体調不良には、薬局(药店・ヤオディエン、または大型チェーンの大药房・ダーヤオファン)が最初の選択肢です。繁華街や住宅街に数多くあり、緑色の十字マークが目印です。

A Chinese chain pharmacy storefront with a green cross sign and shelves of over-the-counter medicine

主な薬局チェーン

  • 老百姓大药房(ラオバイシン)
  • 大参林(ダーサンリン)
  • 海王星辰(ハイワンシンチェン)
  • 一心堂(イーシンタン)

一部の大型店舗は24時間営業しています。

処方箋なしで購入できる薬

上海市公式薬局ガイドによると、市販薬(OTC医薬品)は処方箋なしで購入可能です。アレルギー薬、風邪薬、鎮痛剤、胃腸薬などが対象です。認定薬剤師が在籍する正規の薬局を選び、領収書は必ず保管してください。

なお、抗生物質などの処方薬は規制が強化されており、処方箋なしでの購入は難しくなっています。

💡 日本人旅行者へのアドバイス:薬局スタッフが英語を話せることはほとんどありませんが、パッケージを見せれば対応してもらえることが多いです。必要な薬の一般名(成分名)を中国語でスマートフォンに入力しておくと便利です(翻訳アプリで簡単にできます)。普段服用している薬のパッケージ写真も撮っておくとさらに安心です。

日本から薬を持参する場合の注意事項

常用薬は元の処方ラベルが貼られたパッケージのまま、旅行期間分を持参し、処方箋のコピーまたは医師の英文証明書を携帯してください。一般的に、短期旅行者は7日分程度を目安とした「個人使用の合理的な量」の範囲内であれば持ち込み可能ですが、それを超える量は荷物申告が必要になる場合があります。

麻薬性・向精神性成分を含む薬は規制が厳しくなります。上海税関のガイダンスによると、医療機関が発行した診断書または処方箋と有効な身分証明書(パスポート)の携帯が必要です。

⚠️ 重要な注意:日本では一般的に処方・販売されている薬の一部(特定のADHD治療薬、強力な鎮痛剤、一部の睡眠薬・抗不安薬など)が、中国では厳しく規制されているか、持ち込みが禁止されている場合があります。渡航前に在日中国大使館または領事館に確認し、規制対象の薬は必ず証明書類を揃えてください。書類なしで規制薬物を持ち込むことは絶対に避けてください。

旅行中の健康管理:基本的な注意事項

中国旅行のほとんどは健康上のトラブルなく終わります。以下の基本事項を押さえておけば、リスクを大幅に減らせます。

  • 水道水は飲まない。米国CDCは、中国本土の水道水は大都市でも飲用に適さないと勧告しています。ペットボトルの水は安価でどこでも入手でき、ほとんどのホテルでは煮沸水またはボトル水が提供されています。歯磨きにも水道水は使わないことをおすすめします。
  • 食事は慎重に。中国の屋台グルメは旅の醍醐味のひとつですが、旅行者下痢症を避けるため、お客さんの多い繁盛店を選び、熱々の調理済みフードを食べましょう。詳細は食の安全・食事制限ガイドをご覧ください。
  • ワクチン接種を事前に確認する。CDCは定期接種の更新とCOVID-19ワクチン接種を推奨しており、旅程によってはA型肝炎・腸チフス・日本脳炎・狂犬病のワクチンも検討が必要です。最新情報はCDC中国渡航健康ページでご確認ください。
  • 高地への対策。チベット・青海・新疆・四川省西部などは標高3,000m(約10,000フィート)を超える地域です。急激な移動は避け、水分を十分に摂り、高山病薬について旅行前に医師に相談することをおすすめします。
  • 虫よけ対策。暖かい季節・地域では虫よけスプレーを使用してください。蚊が媒介する感染症のリスクを下げることができます。

よくある質問(FAQ)

外国人旅行者は中国の病院を受診できますか?

はい、受診できます。公立・私立を問わず、中国全土の病院でパスポートを提示するだけで外国人の診察を受け付けています。近年、国際患者の需要が増加しており、北京・上海・深圳などの主要都市では外国人向けの医療サービス改善プログラムが導入されています。

医師は英語を話しますか?

一般的な公立病院の外来では、英語が十分に通じないことがほとんどです。国際部や外資系私立病院では、英語対応の医師やバイリンガルスタッフが揃っています。言語面での不安がある場合は、後者を選ぶことをおすすめします。日本語対応のクリニックも一部の大都市には存在します。

病院での支払い方法は?

アリペイ(支付宝)とWeChat Pay(微信支付)はほぼすべての病院で利用可能です。会計窓口での現金払いも可能です。外国のクレジットカードが直接使えるかどうかは施設によって異なるため、外国カードのみへの依存は避けてください。モバイル決済アプリのセットアップと現金の準備を両方しておくことをおすすめします。

緊急事態で一人の場合はどうすればよいですか?

まず120に電話してください。中国語で話せない場合は、ホテルスタッフや近くの人に助けを求めるか、翻訳アプリを使って症状と場所を伝えてください。夜間の急病(生命に関わらない場合)でも、3Aランクの大型病院は24時間救急部門(急诊・ジーチェン)を運営しています。

日本語対応の病院はありますか?

北京・上海・広州などの大都市には、日本語対応のクリニックや日系企業向け医療サービスを提供する施設が一部存在します。在留邦人向けのサービスが充実しており、旅行者でも利用可能な場合があります。滞在都市の日本大使館・総領事館にお問い合わせいただくと、最新のリストを入手できます。

まとめ:中国での医療トラブルに備える5つのポイント

チェック項目詳細
✅ 緊急番号を覚える医療緊急時は120(北京では999も可)
✅ 海外旅行保険に加入緊急搬送含む十分な補償額のものを選ぶ
✅ 都度払いの準備アリペイ(支付宝)・WeChat Pay(微信支付)と現金を用意
✅ 領収書を保管発票(ファーピャオ)含むすべての書類を保管
✅ 薬・処方箋を持参常用薬は元の包装と証明書類をセットで

中国の医療サービスは外国人旅行者にも十分にアクセス可能で、軽症であれば日本と比べても費用は安く、対応も迅速です。120が医療緊急番号であること、そして公立病院では各ステップで事前払いが必要であることを覚えておけば、いざという時も落ち着いて行動できます。海外旅行保険への加入と薬の準備さえしっかり整えておけば、このガイドの大部分を使う機会はないでしょう。

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最終更新日:2026年6月

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